カーボンニュートラル14分野支援【中小企業診断士監修メディア:merumeta(めるめた)】

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近年よく耳にする機会が増えた「グリーン成長戦略」。「2050年カーボンニュートラル宣言」に伴い発表された戦略です。グリーン成長戦略の概要やカーボンニュートラルの意味、14分野の産業などを解説します。

グリーン成長戦略の概要

「グリーン成長戦略」は、正式名称を「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」といいます。2020年に日本が出した「2050年カーボンニュートラル宣言」を実現するために、2021年6月に発表されました。カーボンニュートラル実現に向けて、技術開発や設備投資などの取り組みを行う産業を支援する政策や実行計画をまとめて、グリーン成長戦略と呼びます。
グリーン成長戦略は、脱炭素化に向かう現代の環境をビジネスチャンスとして活かし、「経済と環境の好循環」を実現することが目的です。国は、脱炭素化に対して大胆な投資でイノベーションを起こすことに意欲的な企業を後押しするために、さまざまな政策を掲げています。

グリーン成長戦略の概要
「経済と環境の好循環」をつくるための産業政策

カーボンニュートラルを実現するために、企業を支援する政策は以下のようなものが打ち出されています。

予算

予算面では、「グリーンイノベーション基金」を創設し、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に2兆円の基金を造成しています。該当する企業に対して最長10年間の研究開発から社会実装までを継続して支援する基金事業です。

税制

税制面では、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」や「研究開発税制」などをつくり、脱炭素化に意欲的な企業が一定の税の優遇を受けられるようにすることを目指しています。

金融

金融面では、ファイナンス資金を活用するための金融市場の整備などを行っています。カーボンニュートラル実現のためには、革新的技術への投資が必要になってきます。金融機関の協力体制を構築し、事業の資金調達がスムーズにできるようにすることも、グリーン成長戦略のなかで重要な政策のひとつです。

規制改革・標準化

カーボンニュートラル実現に向けて開発・実証された技術を実装する段階に入ってきたときのために、規制の強化・緩和による制度の整備も予定されています。新しい技術の需要を世界的に創出するために国際標準化への取り組みも考えられています。

カーボンニュートラルとは

「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガスの排出量と吸収・除去量を差し引きして全体でゼロとすることです。「温室効果ガス」にあたる二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素、フロンガスなどを削減し、地球温暖化への影響を軽減することを目指しています。


出典:経済産業省 「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?

「差し引きゼロ」の状態を目指すためには、上図のようにまずは温室効果ガスの総量を大幅に削減することが必要です。削減したうえで、どうしても排出せざるを得なかった分を、植林や地中深くへの貯留などにより吸収・除去することで、カーボンニュートラルの実現に進むことができると考えられています。

成長が期待される14の産業分野

カーボンニュートラル実現に向けて今後の成長が期待されている産業分野は、全部で14分野あり、それぞれの産業が目標を掲げて脱炭素化への取り組みを進めています。14分野は「エネルギー関連産業」の4分野、「輸送・製造関連産業」の7分野、「家庭・オフィス関連産業」の3分野に大別されます。14分野の目標について見ていきましょう。

成長が期待される14の産業分野
各分野の成長による国民生活のメリット

分野目標国民生活のメリット
洋上風力・太陽光・地熱産業【洋上風力】:2040年、3,000〜4,500万kWの案件形成【太陽光】:2030年、次世代型で14円/kWhを視野商業施設や家庭の壁面にも設置可能な水準を目指し、電気料金を節約する。
水素・燃料アンモニア産業【水素】:2050年、2,000万トン程度の導入【燃料アンモニア】:東南アジアの5,000億円市場・サプライチェーンが安定した、将来の水素火力発電、燃料アンモニア発電は価格安定効果あり。コスト低減が実現した仮定の下で、急な価格高騰の影響を抑止する効果を、仮に家庭電力料金に換算すると、約8,600円/年相当の支出抑制効果を発揮する。
次世代熱エネルギー産業2050年、既存インフラに合成メタンを90%注入・既存インフラの活用により、年間約14,000円の追加負担を回避する。
原子力産業2030年、高温ガス炉のカーボンフリー水素製造技術を確立・放射性医薬品材料への活用の可能性。
自動車・蓄電池産業2035年、乗用車の新車販売で電動車100%・事故・移動弱者・交通渋滞ゼロに向けた、移動の安全性・利便性の向上。・移動時間を現在よりも有効に活用する。・EVの蓄電池を活用して、レジリエンスを向上させる。
半導体・情報通信産業2040年、半導体・情報通信産業のカーボンニュートラル化・グリーンなデータセンターの国内立地により、自動走行や遠隔手術など新たなデジタルサービスを実現。・次世代パワー半導体の実用化等を通じて、家電の電気料金負担を軽減する。
船舶産業2028年よりも前倒しで ゼロエミッション船の商業 運航実現
物流・人流・土木インフラ産業2050年、カーボンニュー トラルポートによる港湾や、 建設施工等における脱 炭素化を実現・自動車を運転できない高齢者等にとって、利便性の高い公共交通サービスを実現する。・グリーンインフラによって、雨水貯留・浸透等の防災・減災や、健康でゆとりのある生活空間の形成、都市緑化によるヒートアイランド対策などを実現する。
食料・農林水産業2050年、農林水産業における化石燃料起源のCO2ゼロエミッション化を実現・木材利用の拡大による睡眠効率向上や、日本食の消費拡大による健康寿命延伸に貢献する。
航空機産業2030年以降、電池などのコア技術を、段階的に技術搭載・低騒音の電動航空機の実現により、空港周辺住民や乗客にとっての許容性を向上させる。
カーボンリサイクル・マテリアル産業【CR】:2050年、人工光合成プラを既製品並み【マテリアル】:ゼロカーボンスチールを実現・消費者の環境配慮や長寿命といったニーズに合わせたコンクリート製品・建築物を提供可能にする。・より高機能な自動車や電子機器等を同価格で利用可能にする。
住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業【住宅・建築物】:2030年、新築住宅・建築物の平均でZEH・ZEB・住宅やビルのゼロエネルギー化を実現し、家庭やビルオーナーが負担する光熱費の大幅な低減を目指す。・住宅の断熱性能向上等を通じて、ヒートショック防止により、健康リスクの低減を図る。
資源循環関連産業2030年、バイオマスプラスチックを約200万トン導入・廃棄物処理施設の強靱性を活かした安定的な電力・熱供給と避難所等の防災拠点としての活用。
ライフスタイル関連産業2050年、カーボンニュートラル、かつレジリエントで快適なくらし・一人一人に合ったエコで快適なライフスタイルを実現。

出典:経済産業省 グリーン成長戦略(概要)マンガでわかるミラサポ plusシリーズ「グリーン成長戦略」編

グリーン成長戦略における中小企業支援

グリーン成長戦略は企業の技術開発や設備投資など、さまざまな取り組みをサポートしており、中小企業等が関連する支援もあります。
たとえば、「事業再構築補助金」には「グリーン成長枠」が設置されており、グリーン成長戦略の政策に向けた研究や技術の開発、人材の育成などに取り組む事業者は補助金を受け取れます。補助上限は中小企業が1億円(補助率1/2以内)、中堅企業は1.5億円(補助率1/3以内)となっており、通常枠と比べて優遇されている点も特徴です。

「ものづくり補助金」も「グリーン枠」が11次公募から新設されました。こちらも一般枠より優遇された補助上限2000万円(補助率2/3以内)の補助金を申請できます。

グリーン成長戦略の重要ポイントのおさらい

  • グリーン成長戦略とはカーボンニュートラル実現のための政策や実行計画のこと
  • 14分野は「エネルギー関連産業」「輸送・製造関連産業」「家庭・オフィス関連産業」に分類される
  • 事業再構築補助金やものづくり補助金でも、グリーン成長戦略の枠で中小企業等への優遇がある

今後もカーボンニュートラル実現に向けた支援策が実施される可能性があるので、グリーン成長戦略に関連する取り組みを行っている事業者は情報を集めておきましょう。

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監修者

株式会社はじまりビジネスパートナーズ 代表取締役
中小企業診断士
白川 淳一

株式会社はじまりビジネスパートナーズ 代表取締役 ・食品メーカー 大手スーパー担当営業、商品の仕入交渉、輸入交渉、委託生産先の管理、子会社役員などライン~スタッフまで全般業務を経験 ・広告代理店系列 データ分析会社、消費者の購買データの分析、商品開発や営業向け用データマーケティングのコンサルティング

この記事を書いた人
箱田 かの

飲食業や小売業、ワーキングホリデーなどを経て、現在はWEBライター歴5年以上になりました。執筆経験のあるジャンルはIT系求人・アパレル・商品紹介メディア・自動車・金融など。 石橋を叩いて壊すほど心配症なおかげで身についたリサーチ力とネットリテラシーが今の仕事を支えています。趣味は音楽とお酒です。

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