事業再構築補助金を申請するときのポイントとは?|変更点や申請する前に知っておきたいことを中小企業診断士が解説!

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今回は事業再構築補助金の概要を、特に増加した枠や申請したときの様子を絡めつつ、説明をしていきます。今回紹介している内容は、令和5年1回目の事業再構築補助金の公募についてになります。皆さんの申請の参考にしていただければと思います。

また、記事末尾には2023年(令和5年)7月23日時点で、この記事の元となった動画のリンクを設置しているので、通勤中などでじっくり読むのが難しい方は、ぜひそちらをチェックしてみてくださいね。

事業再構築補助金とは?

ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援し、中小企業の構造転換を促すことを目的とした補助金です。また、「コロナ前と比較した時の売り上げが減少しているかどうか」が大きな基準として働いているのが特徴的です。

事業再構築補助金(第10回以降)について

事業再構築補助金に関して、中小企業庁から概要の書類が出ます。公募の回ごとの内容をまとめているもので、毎回最新版がリリースされるので、都度チェックしておきましょう。

事業再構築補助金(第10回以降):売上減少要件の撤廃

第10回の公募の概要に関して、特に注目すべき内容は「売上減少要件の撤廃」です。今まで申請する際の大きなハードルとして働いていた「売上減少要件」。こちらは「売上がコロナ前に比べて下がってないといけない」というもの。実は第10回の公募からは売上減少要件っていうのは撤廃になっています。これによって、コロナに困ってるというより、純粋な経済対策的な補助金になる流れになりつつあります。

事業再構築補助金(第10回以降):変更のない項目

第10回公募以前と変わらない項目は以下になります。

  • 認定支援機関の確認を受けてから申請
  • 補助事業終了後3〜5年以内に付加価値額を年率3.0~5.0%で増加させること

依然として大きなハードルとして立ち塞がっているのが「付加価値額の増加」と言えます。

認定支援機関についてはこちらで解説しています。

事業再構築補助金における付加価値額とは?

事業再構築補助金における付加価値額とは何かというと「営業利益+人件費+減価償却費」です。この付加価値額を3~5年で3.0から5.0%(年率)増加させることになります。

例えば目標として「3%」と設定すると、5年間であれば今の付加価値額よりも15%(3%×5年)となり、5年後にその事業の付加価値額が15%上がっているという計画を立てる必要があります。

事業再構築補助金における付加価値額は努力目標?

ここで重要になってくるのが、実際に申請を行っている際に、付加価値額が実は努力目標であって、義務ではないというケースが多いということです。ですので、事業計画を立てる時に必ずしも付加価値額を年最低でも3%上昇させなくてはいけないっていうことではないのです。

少し申請する時のハードルが下がるのではないのでしょうか。

事業再構築補助金(第10回公募分以降)のまとめ

  • 認定支援機関の確認を受けてから申請
  • 補助事業終了後3〜5年以内に付加価値額を年率3.0~5.0%で増加させること
  • 売上減少してなくても申請可能
  • 付加価値額を上げるのは努力目標となるケースが多い

事業再構築補助金に新出した「成長枠」とは?

事業再構築補助金で第10回から大きく変わってきたの「成長枠」という枠です。こちらは従来は「通常枠」と呼ばれる枠で、第10回からは「成長枠」と呼び名が変更になりました。

枠の条件も変更となり、成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業者を対象として、事業再構築の事務局から発行されている指定の事業分野に取り組むのであれば補助金の申請の要件満たすとされています。成長枠は最大7000万円の補助金になります。

事業再構築補助金のグリーン成長枠に新出した「エントリー枠」と「スタンダード枠」とは?

そもそもグリーン成長枠とは二酸化排出削減に取り組む事業を応援する補助金枠です。どういった事業が対象になるのかは事業再構築の事務局から発行されている指定の事業分野を参照してください。

そんなグリーン成長額でしたが、これまでは一つしかありませんでした。ところが第10回からはエントリー枠とスタンダード枠の2枠に別れました。

従来、グリーン成長枠に申請する場合、研究開発の目標や人材育成の目標を設定し、定められた時間数もしくは規定の従業員数に教育を受けさせたり、研究開発期間を設けたりする必要がありました。

今回からリリースされたエントリー枠は、従来の通常枠に比べてその研究開発の期間や教育の機会の規定ハードルを少し下げたものになります。最大8000万円の補助金となります。

事業再構築補助金の物価高騰対策回復再生応援枠とは?

第10回で申請のお手伝いをさせていただいた中で、かなり人気だった枠が物価高騰対策回復再生応援枠です。かなり時期的に早い段階から何百社と殺到していた枠で、非常に人気でした

物価高騰対策回復再生応援枠とは何かというと、「売上が下がっているんでぜひ助けてください」という補助金の枠です。補助金額は他の枠に比べるとやや低いのも特徴です。

また、成長枠やグリーン成長枠は「大規模な賃上げで2/3に引き上げ」といった具合に何かしらの条件がつかないと2/3まで引き上がりませんでした。一方の物価高騰対策回復再生応援枠は無条件で2/3もしくは一部の事業者様に関しては3/4まで補助率が引き上がります

事業再構築補助金の産業構造転換枠

産業構造転換枠とは、「産業自体の弱体化によって過去10年間通じて右肩下がりになっている、そしてこの状況を打破するために新しい産業に転換していかなければいけない」といったケースが当てはまります。売り上げの減少の証明は必要となるものの、産業構造転換枠は補助率が無条件に2/3、最大7000万円まで補助されます。

事業再構築補助金のサプライチェーン強靭化枠

サプライチェーン強靭化枠とは、海外で製造する部品などの国内回帰を進めて国内サプライチェーンの強靭化及び地域産業の活性化に資する取り組みを行う事業者を対象とした補助金枠です。

例えば、自動車の部品の産業を例にしてみましょう。
今までAという会社は海外のBという大きな自動車会社から部品を調達していました。
調達していた部品を、Aは国内自動車の部品会社Bに依頼しようとしている。
ところがCは海外にも国内にも工場や設備を持っていないため、国内に工場の新設をする必要がある。

このように海外のAというサプライヤーから国内のBというサプライヤーへの乗り換える際に必要となる工場の建設や設備への投資を、最大5億円、補助率1/2で補助するのがサプライチェーン強靭化枠です。つまり、海外に移転していた大型の事業を国内に回帰させることを目的としている補助金枠になります。

そのため、他の補助金枠とはスケールが異なり、大胆にもう1個会社を作る、新しく工場を作るというような目標をもつ事業者が応募する枠がこのサプライチェーン強靭化枠になります。

※第11回の公募にはサプライチェーン強靭化枠はありませんのでご注意ください。

▶︎事業再構築補助金 公募要領 (第11回)

事業再構築補助金(第10回)から事前着手申請ができなくなった

事業再構築補助金(第10回)から、これまで許容されていた事前着手申請が不可となりました。事前着手申請とは何か、それがどのように申請に影響が出てくるのでしょうか。実はこの変更によって、申請の相談や確認をしてもらう認定支援機関やコンサル選びに慎重さが求められるようになりました。

実は補助金はすぐにはもらえない!

補助金は採択されたからといってすぐに補助金が出るわけではありません。そのため、必ず持ち出しが発生します

例えば極端な話だと、最大5億円で補助率1/2の補助金が決まった場合、最初に10億円を準備する必要があります。

10億円準備するのはかなり大変ですよね。予算についての妥当性、そのための資金計画をどうするのか、金融機関さんとはどういうお取引をされているのかなどなど、こういった細部まで認定支援機関やコンサルタントに相談するとトラブルにならないでいいかなと思います。

事前着手申請とは?

実は第10回の公募から事前着手申請がサプライチェーン強靭化枠以外のほとんどの枠においてできなくなりました。

補助金の採択が決まり、その後に交付申請という手続きをします。交付申請は申請した内容をもとに、最終的な見積もりと設備や工場の図面を政府の担当機関に届けて、補助金を確定する手続きです。

本来のルールであれば交付申請手続きををしたあとでなければ、工事の着工や備品や設備の発注はしてはいけません。しかし、事前着手申請があった時には特別にその交付申請の前に発注や着工が許容されていました。

しかし、これができなくなってしまいました。すると交付決定が降りるまでは発注もできず、頭金も入れられない状態になります。そういった状況で金策をして行かなくてはいけません。とりあえず先にプロジェクトを動かして、金融機関を取引をして半分だけでもいいから融資してもらうといった手法が取れなくなりました。

コンサル会社ごとに、とにかく申請上手に書きます、うちの会社は90%採択率あります、などなどいろいろ謳い文句があると思います。しかし、事前着手申請ができなくなったため、綿密な事業計画と資金の組み立てが必要となります。

  • 事業の内容の相談に乗れるか
  • 事業の実現性を見据えた議論ができるか
  • 資金繰りについての相談ができるか

これらができるコンサルタントがいいと思います。これらをしっかりと打ち合わせしていただいた方が、採択率だけでなく、一番大変なその後の事業の実行にも響いてくるかなと思います。

まとめ

今回は事業再構築補助金の概要と、第10回事業再構築補助金における変更点や申請に関してのポイントについて解説しました。

事業再構築補助金の申請に際して、認定支援機関の確認、または申請の補助を受ける必要があります。私たち「はじまりビジネスパートナーズ」も認定支援機関の一つです。もし、認定支援機関にご相談をしていただくときに、まず何をやりたいのかっていうことをちゃんと明確にお話ししてあげるといいと思います。そうすることで枠のご提案やアドバイスが可能になります。

下記に弊社代表の白川の解説動画も載せておきました。これからも補助金やビジネスの後押しをできるような情報発信をしていきますので、ぜひチャンネル登録やブックマークをお願いいたします。

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監修者

株式会社はじまりビジネスパートナーズ 代表取締役
中小企業診断士
白川 淳一

株式会社はじまりビジネスパートナーズ 代表取締役 ・食品メーカー 大手スーパー担当営業、商品の仕入交渉、輸入交渉、委託生産先の管理、子会社役員などライン~スタッフまで全般業務を経験 ・広告代理店系列 データ分析会社、消費者の購買データの分析、商品開発や営業向け用データマーケティングのコンサルティング

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